【徹底解説】フィリピン特有の慣習「13ヶ月給与」とは?法的リスクの回避と年末の離職を防ぐモチベーション管理術

【徹底解説】フィリピン特有の慣習「13ヶ月給与」とは?法的リスクの回避と年末の離職を防ぐモチベーション管理術

人手不足が深刻化する日本市場において、高い英語力とホスピタリティを備えたフィリピン人材への期待はかつてないほど高まっています。しかし、彼らを雇用する上で避けて通れないのが、フィリピン独自の労働慣習である「13ヶ月給与(13th Month Pay)」の理解です。

「単なるボーナスのことだろう」と安易に考えていると、思わぬ法的トラブルや、優秀な人材の年末離職を招くリスクがあります。本記事では、フィリピン人材採用のスペシャリストの視点から、13ヶ月給与の法的定義、計算方法、そしてフィリピン人の勤労意欲を最大化させるためのマネジメント術を徹底解説します。

この記事のポイント(Executive Summary)

  • 法的義務の理解:フィリピン国内で雇用する場合、13ヶ月給与は法律で定められた雇用主の義務であり、拒否権はありません。
  • 離職防止の鍵:13ヶ月給与はフィリピン人にとって最大の関心事。支払いタイミングと方法が年末の定着率を左右します。
  • 日本国内採用での応用:特定技能などで日本で働く場合も、この慣習を理解した給与設計をすることで、他社との差別化が可能です。

1. 13ヶ月給与(13th Month Pay)とは何か?

13ヶ月給与とは、フィリピンの大統領令第851号によって定められた、すべての民間企業に課せられる法定手当です。フィリピン国内の事業所で働く従業員(1ヶ月以上勤務している全従業員)に対し、通常の月給1ヶ月分を追加で支払うことが義務付けられています。

日本における「賞与(ボーナス)」は、会社の業績や個人の査定によって支給額が変動したり、場合によっては支給されなかったりするのが一般的です。しかし、フィリピンの13ヶ月給与は「業績に関わらず支払わなければならない法的義務」である点が決定的に異なります。

比較:13ヶ月給与と日本式ボーナスの違い

項目 13ヶ月給与 (PH) 日本式ボーナス
法的根拠 法律で義務付け(強制) 任意(就業規則による)
支給額の決定 基本給の1/12以上(固定) 業績・査定により変動
支給期限 原則12月24日まで 企業の任意

2. 正しい計算方法と支給期限の遵守

13ヶ月給与の計算は非常にシンプルです。基本的には「その暦年に支払われた基本給の総額 ÷ 12」となります。ここで注意すべきは、残業代、休日出勤手当、夜勤手当、各種手当(米代や交通費など)は計算の基礎となる「基本給」には含まれないという点です。

  • 計算式: (1月〜12月の基本給合計) ÷ 12 = 13ヶ月給与額
  • 中途採用の場合: 入社時期に関わらず、その年に勤務した期間に応じた按分計算で支給する必要があります。
  • 退職者の場合: 年の途中で退職する場合でも、その時点までの勤務期間に応じた13ヶ月給与を「最終清算(Final Pay)」に含めて支払う義務があります。

⚠️ 法的リスク:支給遅延は厳禁

フィリピンの法律では、13ヶ月給与は毎年12月24日までに支給完了しなければなりません。これを怠ると労働雇用省(DOLE)への苦情対象となり、最悪の場合、フィリピンでの事業ライセンスやDMW(旧POEA)を通じた人材募集に支障をきたす恐れがあります。

3. なぜ「13ヶ月給与」がモチベーション管理に重要なのか?

フィリピン人にとって、12月は1年で最も神聖かつ重要な月です。世界最長とも言われるフィリピンのクリスマスシーズンにおいて、家族や親戚が一堂に会する「ノチェ・ブエナ(クリスマスイブの晩餐)」の費用、そして子供たちへのギフト代として、13ヶ月給与は彼らの生活設計に完全に組み込まれています。

「13ヶ月給与を期日通り、あるいは早めに支給する雇用主」は、従業員から絶大な信頼を得ます。逆に、支給が遅れたり、不透明な理由で減額したりすることは、労働意欲の著しい低下を招くだけでなく、「この会社は従業員を大切にしない」という評判が広まり、一斉離職の引き金になることさえあります。

4. 日本の現場(特定技能・技人国)での応用戦略

日本国内の事業所でフィリピン人を雇用する場合(特定技能や技術・人文知識・国際業務など)、適用されるのは日本の労働法です。したがって、契約書に記載がない限り、フィリピン式の「13ヶ月給与」を支払う法的義務はありません。

しかし、「優秀なフィリピン人材を長期的に定着させたい」と考える経営者・人事担当者の方は、以下の戦略を検討することをお勧めします。

  • 「年末賞与」としての設計: 日本のボーナス制度を「13ヶ月給与に近い形」で説明し、12月に確実に支給する。
  • 期待値のコントロール: 採用時の雇用条件説明(オリエンテーション)で、「日本では13ヶ月給与という名称ではないが、同等以上の賞与制度がある」ことを明確に伝え、不安を払拭する。
  • 精神的ケア: 12月はホームシックになりやすい時期です。13ヶ月給与の支給と併せて、社内でのクリスマスパーティーや、少額のギフトを贈るなどの配慮が、彼らの帰属意識を劇的に高めます。

5. リンクアジアが提供するコンプライアンス支援

フィリピン人材の採用には、日本の法律だけでなく、フィリピン政府(DMW)が定める複雑なルールへの理解が不可欠です。13ヶ月給与のような文化的な背景を持つ制度を正しく運用できないことは、採用コストの無駄遣いにつながります。

Link Asia Manpower Solutionsでは、フィリピン現地に拠点を持ち、現地の労働法と日本企業のニーズの両方を熟知しています。給与設計のアドバイスから、離職を防ぐための文化的マネジメント支援まで、一気通貫でサポートいたします。

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