
技能実習制度が廃止へ!新たな「育成就労」制度の全容と2027年移行までの道筋を徹底解説
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日本の外国人材受け入れが、歴史的な転換点を迎えています。
その中心にあるのが、長年にわたり日本で働く外国人のための重要な道筋だった「技能実習制度」です。そして今、この制度が根本から変わるという大きなニュースが飛び込んできました。2027年、技能実習制度はいわゆる「廃止」が決まり、新たな外国人人材育成の仕組み「育成就労」に生まれ変わろうとしているのです。この変化が何を意味し、誰にどのような影響を与えるのか?最新の情報を基に、詳細に、そして分かりやすく解説します。
主要なポイント
- 政府が技能実習制度を廃止し「育成就労」制度へ移行(2027年4月完全実施)
- 従来との明確な違い:「技能習得」から「即戦力育成」へのパラダイムシフト
- 日本語教育の義務化(最低100時間以上)と転職自由化の導入が柱
- 送り出しルートを公的機関に限定し透明性確保
- 地方企業優遇措置で地域格差是正を図る
大転換!政府が「育成就労」制度を正式提示、2027年に技能実習制度完全移行へ
2025年5月20日、日本政府は専門家検討会に対し、「育成就労」(いくせいしゅうろう)という全く新しい制度の基本方針を提示しました。東京HRCレポート
これは単なる制度の名称変更ではありません。現在の技能実習制度に代わる、日本における外国人材の育成・雇用に関する新しい骨格そのものを構築する計画です。政府は具体的な道筋として、2027年4月をめどに、技能実習制度をこの「育成就労」制度へと全面的に移行させ、技能実習制度そのものは廃止する方針を固めています。Link Asiaマンパワーソリューションズ / Axisソリューション
この決断は、技能実習制度が抱えてきた様々な課題――人権保護の脆弱さ、技術習得の実態と乖離、実習生のキャリアパスの不明確さなど――に正面から向き合い、より「実践的な技能を持った人材の育成と安定的な就労」を目指す大胆な政策転換です。
技能実習生として働き始めた人々、そして彼らを受け入れる日本の企業側にとっても、雇用や経営計画に大きな影響を与える重要な変更となることは間違いありません。
注目ポイント:
- 育成就労制度への完全移行予定:2027年4月
- 新制度の核:「技能実習」から「育成しながら就労」へのパラダイムシフト
- 目的: 即戦力となる外国人材の育成と安定雇用の実現
- 具体的な移行計画や企業向け支援策は今後、詳細が詰められる予定
空回り?新制度移行直前の微調整:2025年6月、「運用要領」一部改正スタート
2027年の大きな変革を前に、現行の技能実習制度の運用自体も微調整が続けられています。
2025年6月1日、法務省・厚生労働省は「技能実習制度運用要領」の一部改正を実施しました。JITCO発表 / フォワード協会ニュース
今回の改正は、主に既存の運用上の隙間を埋め、より確実な技能実習の実施や実習生保護を図ることを目的としたものであり、大幅な制度変更ではありません。しかし、このタイミングでの改定は、新制度「育成就労」の構築と並行して、現行制度を回しながら最終段階に向けた細かな調整を進めている証左と言えるでしょう。
技能実習機関や監理団体、受入企業は、2027年まで引き続き現行制度に基づいて実習を行いますが、同時にこのような細かいルールのアップデートにも対応していく必要があります。
改正の例(詳細は公式発表を確認):
- 特定の報告様式の変更
- 団体監査基準の微修正
- 支援内容の補足説明追加 等
新制度「育成就労」の中身を詳しく掘り下げ! 特徴を8項目で完全網羅
「育成就労」制度とは、具体的に何がどう変わるのでしょうか?現時点で明らかになっている制度の骨子を、わかりやすく整理します。
- 対象分野:ベースは17分野
介護や農業など、現在技能実習や特定技能で定められている分野から選定された17分野が想定されています(※労働力確保が特に必要な分野に重点)。東京HRCレポート これにより幅広い業界での人材確保が図られます。 - 目標到達レベル:特定技能1号相当の技能を育成目的に
新制度の大きな目的は、労働者を育成し、3年程度で「特定技能1号」相当の技能レベルに到達させることです。Axisソリューション 「技能実習」から、より実践的かつ日本社会で即戦力となる技能を得られる仕組みへの転換が明確です。特定技能制度との連携が一層強まります。 - 日本語教育の義務化:最低100時間以上
技能だけでなく、生活と就労に不可欠な日本語習得を徹底します。事業主(受け入れ企業)に対して、特定技能1号レベル(ある程度日常会話ができ、業務に必要な日本語が理解できる)を目指すための体系的な日本語教育を、必ず実施することを義務付ける方向性です。Axisソリューション 具体的には最低100時間以上の教育が想定されています。 これにより、外国人労働者の社会への円滑な統合と職場でのコミュニケーションの安全性・効率性が向上することが期待されます。 - 地域バランス調整:大都市制限 vs 地方緩和
外国人材の過度な都市部集中を防ぎ、人手不足が深刻な地方への配置を促進する工夫が盛り込まれます。- 対象地域(関東、中部、近畿の特定8都府県): 企業が受け入れ可能な人数(常勤職員数)に対する育成就労者の割合(キャップ)を低く設定(より厳しく制限)。
- その他の地域(地方): 上記のキャップを緩和し、より多くの受け入れを可能に。Axisソリューション
これにより、地域ごとの労働力需要のミスマッチ解消を図ります。
- 送り出しルートの抜本変更:仲介組織は公的機関のみに限定
大きな変化の一つが「中間団体」の在り方です。 新制度では、日本と送り出し国をつなぐ役割(あっせん)を持つ組織は、基本的に 「公的機関(ハローワーク等)」のみ とし、民間の人材ビジネス(ブローカー)」を排除する方針が示されています。Axisソリューション これにより、制度の透明性向上や、悪質な仲介業者による高額なブローカー手数料要求(送り出し費用)の問題を抑制し、労働者の保護を強化することが目的です。労働者と受入企業双方への説明責任が明確になります。 - 在留資格の名称変更:評価試験は「育成就労評価試験」へ
新制度の実施に伴い、これまでの「技能実習評価試験」は、名称を「育成就労評価試験」に変えられる見込みです。東京HRCレポート 基本的な技能評価の目的や機能は継承されますが、資格の名称が制度全体のコンセプト変更を反映したものになります。 - 希望者には「転職の道」も検討:1~2年目で条件付き可能に
現行の技能実習制度で最も批判があった点の一つが「転職の難しさ」でした。新制度では、一定の期間(想定:1年または2年)を経た後、本人の同意と受け入れ企業などの条件を満たせば、同一分野内での転職(受入企業変更)の可能性を開く方向性です。Axisソリューション これは、技能継続の保証があることが前提ですが、労働者のエンパワーメントと、不当な労働環境からの脱却の機会を制度的に担保する重要な一歩となります。「青天井で自由な転職」というよりは、「適切な条件の下でのキャリアパスの柔軟化」という性格です。 - 制度の具体化はこれから:パブリックコメント実施中
現時点(2025年6月)で提示されているのは制度の基本的な設計方針(概ね大枠)です。実際に運用するための詳細なルール(省令や告示などの法令)については、現在、政府が案を作成し、広く一般から意見(パブリックコメント)を募集している段階にあります。Axisソリューション 最終的にどのような細則が定められるかは、企業や関係機関にとって非常に重要であり、注視が必要です。
特定技能の拡大! 「物流倉庫」「資源リサイクル」「リネンサプライ」の3分野が追加へ
新制度「育成就労」と並行して、日本政府は即戦力を求める「特定技能」制度自体も積極的に拡大しています。
政府は、特定技能の対象分野に「物流倉庫」「資源リサイクル」「リネンサプライ」の3分野を追加する方針を固めました。東京HRCレポート
この追加により、これまで16分野だった特定技能の対象分野は19分野に拡大されます。
- 「物流倉庫」: EC需要の急拡大などで慢性的な人手不足が続く倉庫・物流センター業務。荷役、検品、仕分けなどが典型的業務。
- 「資源リサイクル」: 資源循環・廃棄物処理分野での人手不足解消。施設での分別・選別、処理作業など。
- 「リネンサプライ」: ホテル・病院・福祉施設などで大量に発生するシーツやタオル、ユニフォームなどの洗濯・保管・配布業務。
これらの追加は、深刻化する人手不足に対応し、バックヤード業務の維持・強化を図る狙いがあります。外国人材の裾野がさらに広がり、業種によっては特定技能人材の受け入れが重要な選択肢となることが予想されます。
育成就労で目指す未来:外国人労働者・企業・日本の社会にとっての変化点
2027年の「育成就労」制度本格施行に向けて、この大改革は各当事者にどのような変化をもたらすのでしょうか。未来図を描いてみましょう。
外国人労働者にとって:
- 技能習得と即戦力化(特定技能相当レベル獲得)が制度の主目的となり、より実質的な職業スキルを得られる機会となる。
- 最低100時間以上の日本語教育が義務化されることで、日常生活や職場でのコミュニケーションがしやすくなる。
- 条件付きながらも、同一分野内での転職の可能性が開かれることで、不適切な職場環境に縛られるリスクが軽減される(強制では無いため、希望と条件整備が前提)。
- 仲介機関が公の機関中心になることで、高額な手数料取引や送り出しの不透明性が是正される可能性が高まる。
- 特定技能の分野拡大により、3年後や新規に日本で働く道がさらに広がる。
受け入れ事業主(企業)にとって:
- 「技能実習から育成就労へ」の移行に伴い、より真摯な技能育成計画と教育責任(特に日本語教育)が求められる。
- 外国人材を特定技能レベルまで育てる「育成者」としての役割が一層重要になる。
- 転職可能性の導入により、労働環境や労働条件の改善への社会的圧力が高まる(働きやすい環境作りが人材定着の鍵に)。
- 地域別の受け入れ制限(都市部が厳しく地方が緩和される)により、地方企業は人材確保の点で一定の優位性を得る可能性がある。
- 仲介組織が公的機関に限定されることで、信頼できる国際人材募集ルートの選択肢が明確化される一方、これまで民間の送り出し機関と直接取引していた場合には新しいパートナーシップ構築が求められることも。
- 大都市圏の企業は、厳しい人数制限の中で、より高度なスキルを持つ外国人材の獲得競争が激化する可能性がある。
- 現行制度下で実習生を受け入れている企業は、2027年までの間にスムーズな移行計画(方向転換を含む)の策定が急務となる。
日本の社会・経済にとって:
- 安定的な労働力確保の制度の持続可能性向上。「技能実習」という名目と長く指摘された実態の乖離から、「育成就労」という目的と手段がより整合性を持った制度へシフト。
- 特定技能相当の人材育成に集中することで、産業レベルでの労働力の底上げと生産性向上が期待される。
- 日本語教育の強化により、外国人労働者の社会的統合プロセスの促進と地域コミュニティの活性化につながる。
- 地方創生の観点から、地域格差の是正(地方への外国人材流動促進)に貢献。
- 世界的に激化する高度人材獲得競争の中で、日本市場としての中長期の競争力維持を図る重要な政策の一つとなる。
2027年へのタイムラインと受け入れ企業が今からすべきこと
大きな制度変更は目前。今、受け入れ企業・機関が動き始めなければならない時期が来ています。
即時 (2025年中):
- 情報収集を徹底: 法務省、厚生労働省、JITCO、経済産業省、業界団体などの公式発表(特に詳細な省令・告示案が固まった時点)やセミナー情報に注力。パブリックコメントにも関心を持つ。
- 現状把握: 自社の現行技能実習制度での運用状況(技能実習計画、実習生への支援・教育の実態、技能評価試験進捗など)を精査。
- 日本語教育体制の棚卸し・準備: 新制度で義務化される日本語教育(最低100時間以上)。外部委託やオンライン教材を含め、実施可能な体制を検討し始める。
- 「育成者」としての意識醸成: 単なる受け入れ・雇用から、目標技能レベルまで外国人材を積極的に育て、評価する「育成マインド」への社内シフトを図る。
2026年 (移行1年前):
- 新制度対応計画策定: 法務省などから詳細な運用ルール(省令・告示)が発表された後、自社が新制度に適合するための具体的な移行計画(人材確保計画、教育訓練計画、評価制度の見直し等)を立ち上げる。コンサルタントや行政書士など専門家のサポートも検討。
- 人事制度・雇用契約見直し検討: 転職可能性(同一分野内での条件転職)を見据えた労働条件・賃金体系・福利厚生の適正化を進める。
- 社内戦略協議: 役員・管理職・現場リーダーと議論し、新制度下での外国人材活用ビジョンを共有・決定する。
- 公的機関(ハローワーク等)との関係構築: 従来の民間送り出し機関から移行する場合、ハローワーク等の公的機関経由での人材獲得ルートを築く準備を始める。
2027年4月 (新制度スタート):
- 新制度「育成就労」での受け入れ開始: 新たに来日する外国人材は原則として育成就労制度下での契約・在留資格となる。
- 既存技能実習生の取り扱い: 制度が切り替わる2027年4月時点で在留中の技能実習生については、法律に定める経過措置が設けられることが予想されます(例:定められた期日までに所定の技能習得や評価試験への対応を完了するなど)。既存の実習計画に基づき、適切に実習を修了できる環境を整えると同時に、新制度の精神に沿ったフォローアップも検討が必要となるでしょう。
専門家が指摘する「育成就労」成功のカギ:転職可能性という新たな環境
新制度の中で最も注目すべき点のひとつである「転職可能性」について、専門家は「成功への分岐点」として警鐘と期待の両方を示しています。
現行の技能実習制度での大きな課題は、実習生が雇用主に「縛り付け」られる構造にあったこと。 不適切な労働条件や不当解雇、過重労働などの人権侵害の背景には、実習生が簡単に転職できない制度的縛りがあったのです。
「育成就労」では、一定期間(1年/2年目)を超えた後、本人の同意と所属組織などの調整を条件に、同一業務分野内での新たな雇用先への移行機会を提供する方向性が打ち出されました。
期待される効果:
- 労働者保護の強化:不当な扱いからの脱出オプションが生まれる。
- 雇用主(企業)側への健全なプレッシャー:労働環境や待遇の改善努力を促す(良い企業が人材を集められる)。
- 労働市場の流動性アップ:より適切な人材配置の実現。
- 外国人材の定着率向上:働きやすい環境で能力発揮の機会が増える。
懸念される点・乗り越えるべき課題:
- 「同一分野内」の定義を明確に: 業務内容や必要な資格技能が大きく異なる職種間の移動をどこまで許容するか?具体化が必要。
- 転職を可能にする透明かつ公平な手続きの構築: 労働者と新規雇用主、現雇用主・監理機関(公的機関)間での情報共有や同意手続きの円滑化。悪質な引抜き防止措置も重要。
- 受け入れ地域の制限との調整: 都市部での厳しい人数制限下では、転職希望者の受け皿確保が難しい可能性も。
- ルール遵守の徹底と監視: 新たな抜け穴の発生を防ぐための公正な執行機関の役割強化。
<极>雇用主(企业)侧の人的・时间的成本増: 采用・教育にかけたリソースが流出することへの懸念と補填どうするか。
転職可能性制度が単なる「形式」に終わらず、実効性を伴って労働者の権利保護と人材育成効果を最大化するためには、制度設計の緻密さと同時に、それを運用する側(企業、機関、行政)の意識改革が不可欠です。 これは「育成就労」制度の評価を左右する、まさに成功のカギとなるポイントでしょう。
まとめ:2027年技能実習制度廃止。「育成就労」時代に備えよ!
技能実習制度は、約30年の歴史に幕を下ろそうとしています。2025年6月の今、我々が直面しているのは単なる制度名の変更ではなく、日本の外国人人材受け入れ政策の根幹を揺るがす、本質的なパラダイムシフト「育成就労への移行」です。
- 完全移行時期は2027年4月。
- 従来の「技能実習」概念は廃止。 新たな柱は「育成しながら就労し、特定技能レベルの人材に育て上げる」。これは日本語教育(最低100時間)の義務化に象徴される。
- 区域別受け入れ制限(大都市厳格化・地方緩和)で地方活性化を後押し。
- 送り出しルートは営利組織排除、公的機関中心へ。
- 転職可能性(同一分野内での条件付き移籍)導入で労働者の選択肢と保護強化へ。
- 今はパブリックコメント実施中。省令・告示など詳細は今後具体化。
▼何をすべきか?▼
- 受け入れ事業者・監理団体: 詳細法制定の動向を注視。日本語教育体系整備の検討開始。労働環境・条件見直し。公的ルートへの切り替え準備。既存技能実習生の円滑な移行計画策定。2026年を念頭に動き出す!
- 外国人材・希望者: 新制度での流れ(教育-育成就労を経て特定技能レベル獲得)を理解し、真剣に日本語と技能習得に取り組む意志が重要。透明性の高いルートから情報を収集。
- 社会全体: 育成マインドを基軸にした多文化共生社会構築への準備。制度の実効性確保のための社会の監視機能も強化。
この移行は、少子高齢化が進む日本が「労働力」として以上に「共に働く人材」を育て、社会の持続可能性を高めるための、大きな一歩となる可能性を秘めています。2027年の新たな世界に向け、今、情報を取り込み、備えを始める時が来ています。技能実習制度の未来は終わろうとしていますが、外国人材と日本の働き方の未来は、正念場を迎えています。
FAQ よくある質問
Q1. 新しい「育成就労」制度の開始時期はいつですか?
2027年4月に完全移行予定です。2025年現在は法案策定・パブリックコメント募集段階です。
Q2. 現行の技能実習生はどうなりますか?
2027年4月時点で在留中の場合、経過措置が適用され現行ルールで修了を目指します。詳しい移行ルールは今後発表。
Q3. 日本語教育100時間義務化について詳しく教えてください。
受け入れ企業責任で、業務に必要な日本語(特定技能1号相当)習得を目指す体系的教育です。方法や研修費負担は未定。
Q4. 「転職可能性」とは誰でも簡単に転職できるのですか?
一年目/二年目終了後、同一業務分野内で本人同意・条件整備が必要です。完全自由転職とは異なります。
Q5. 公的機関経由の送り出しは具体的にどう行いますか?
ハローワークなど政府系機関が主要ルートとなり、民間ブローカー排除で透明性確保を目指します。