【フィリピン人材採用ガイド】知っておくべき「募集手数料 (プレイスメントフィー) 徴収禁止」の原則と例外

【フィリピン人材採用ガイド】知っておくべき「募集手数料 (プレイスメント・フィー) 徴収禁止」の原則と例外

フィリピン人材を日本企業へ受け入れる際、現地の法令遵守は非常に重要です。とくに注意すべきなのが、採用活動における「費用の負担区分」です。

今回は、フィリピン海外雇用庁(POEA)(現DMW)の公式規定に基づき、フィリピン人労働者の日本への派遣に関する募集手数料(プレイスメント・フィー)のルールについて、具体的な数字と事実を交えて解説します。

1. 原則:労働者からの募集手数料徴収は「禁止」

2019年12月2日に発行されたフィリピン海外雇用庁(POEA)の回覧第19号(2019年シリーズ)によると、日本へ派遣される労働者から募集手数料を徴収することは原則として禁止されています。

これは、日本の職業安定法第32条の3の規定に基づく措置です。求職者保護の観点から、一般的な労働者(技能実習生や特定技能などを含む)を採用する場合、採用にかかる紹介手数料等を労働者本人に負担させることはできません。したがって、紹介手数料等は受け入れ企業側が負担することが大前提となります。

2. 現地送出機関における「よくある誤解」と事実

フィリピンの送出機関の中には、「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」といったいわゆるプロフェッショナルビザであれば、給与額に関係なく労働者本人から費用を徴収しても良いと誤認しているケースが見受けられます。しかし、これは明確な事実誤認です。

就労ビザの種類だけで一律に徴収が許可されるわけではありません。すべてのカテゴリーやプロフェッショナルビザで本人から徴収できるという考えは明確に否定されます。

3. 手数料徴収が認められる5つの「例外職種」

原則として徴収は禁止されていますが、厚生労働省令(職業安定法施行規則)により、高度な専門性を持つ一部の職種に限り、例外的に職業紹介サービスの費用徴収が認められています。該当するのは以下の5つの職種のみです。

  • 芸能人(ミュージシャン、舞台俳優、放送番組・映画・寄席・劇場等の演芸等)
  • モデル(ファッションショー等のイベント、広告モデル、美術モデル)
  • 科学者(事業活動に関する技術的事項の研究、企画、管理、指導)
  • 経営幹部(マネジメント・エグゼクティブ)
  • 熟練技能者(職業能力開発促進法に基づく特級または1級の技能検定合格者、あるいはそれに準ずる技能を持ち、その技能を生産活動等に活用する者)

4. 例外適用における厳格な「数字」と「資格」の条件

上記の例外職種に該当し、費用徴収を行うには、以下の客観的な事実と数字による厳格な制限をすべて満たす必要があります。

  • 年収要件の絶対条件(700万円以上):対象職種であっても、雇用開始から1年間の年収が700万円以上でなければ、労働者本人からの募集費用徴収は一切認められません。
  • 厳格なライセンス要件:「熟練技能者」として例外適用を受ける場合、日本の職業能力開発促進法に基づく特級または1級の技能検定合格、あるいはそれに準ずる技能という具体的な資格・ライセンスを保有しているという事実が必要です。
  • 徴収額の上限(10.8%):徴収できる紹介手数料は、雇用後6ヶ月間に支払われる賃金の10.8%(免税事業者の場合は10.3%)に相当する額が上限となります。
  • 民間送出機関の制限(月給1ヶ月分):フィリピンの民間募集代理店が徴収できる募集手数料は、2016年のPOEA規則に基づき、最大でも月給の1ヶ月分までと定められています。

5. 日本企業が取るべきコンプライアンス対応

本回覧の規定に違反した場合は、POEA規則の該当規定に基づく罰則の対象となります。

年収700万円を超える特定の高度専門職・経営幹部層等で、かつ厳格なライセンス要件を満たす場合を除き、労働者への費用転嫁は法令違反となります。「プロフェッショナルビザだから問題ない」と安易に労働者負担を容認する送出機関には十分な注意が必要です。

フィリピン人人材の採用を長期的に成功させるためには、こうした日比両国のルールを客観的事実として正しく認識し、適正なコスト負担のもとで透明性の高い採用活動を行うことが不可欠です。法令を正しく理解し遵守しているクリーンな受け入れ体制を構築しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「技術・人文知識・国際業務(技人国)」のビザで採用する場合、年収が400万円であれば本人から募集手数料を取れますか?

A. いいえ、取れません。本規定の例外に該当するには、対象職種(科学者や経営幹部など)であることに加え、「初年度の年収が700万円以上」という具体的な数字の条件をクリアする必要があります。年収400万円の場合は、いかなる職種であっても本人からの募集手数料の徴収は禁止されています。

Q2. 現地の送出機関から「プロフェッショナル層だから本人が払うのが通例だ」と言われましたが、信じて良いでしょうか?

A. 注意が必要です。現地には本規定(POEA回覧第19号)を正確に理解していない、あるいは意図的に無視している送出機関が存在します。ビザの種類ではなく、「職種」「年収700万円」「ライセンス」という客観的な条件を満たしていない限り、労働者負担は法令違反となります。企業側もリスクを負う可能性があるため、書面で法的な根拠を確認することをお勧めします。

Q3. 「熟練技能者」とは具体的にどのような人を指しますか?

A. 日本の「職業能力開発促進法」に基づいた1級以上の技能検定合格者、またはそれと同等の高度な技能を持ち、その技能を直接業務に活用する人を指します。単に経験が長いというだけではなく、客観的な資格やライセンスによる証明が必要となります。

Q4. ルールに違反して労働者から徴収していたことが発覚した場合、どうなりますか?

A. フィリピンの送出機関はPOEA(現在はDMW)による免許停止や取り消しなどの厳しい行政処分を受ける可能性があります。また、日本側の受け入れ企業も、不適切な採用プロセスに関与したとみなされれば、コンプライアンス上のリスクや将来的な人材招聘に影響が出る恐れがあります。

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